-regret- 「ザフトに戻ったらどうなるんだろうな?俺達。」 「・・・・・・」 「軽く銃殺刑にでもなるかもしれないぜ。」 「冗談でも言うな!!俺はこんな所で死んでやらないぞ!」 「・・・相当イラついてんな、イザーク。」 アークエンジェルの待機室に、ディアッカの飽きれた声とイザークの甲高い声が響く。 二人は長時間この部屋に半ば閉じ込められた状態である。 停戦の報告が入り未だ混乱している艦内で下手に動き回られたら面倒、と押し込まれたのだ。 その為、今両軍がどうなっているのかさえ判らない状況にある。 しかしそれはディアッカの企みであった。 イザークがアークエンジェルのクルー達と顔を合わせるのは危険だと思っての計らいだった。 この艦には元地球軍、ナチュラルが乗っている事は勿論、イザークがあれほど忌み嫌っていた ストライクのパイロット、キラ・ヤマトもエターナルから移ってきたと聞いた。 だが土壇場になってこちら側を援助したという事実もある為、彼の気持ちをしっかりと理解した上で 対面させたい、とディアッカは思っていた。 何とかイザークを宥めようと声をかけようした瞬間、ドアの開く音がする。 「「アスラン!」」 「久しぶりだな、イザーク。」 「貴様・・・どの面下げて俺の前にいる!ザフトを裏切るとは、見損なったぞ!!」 「イザーク、落ち着けって。」 「お前もだディアッカ!」 「そんな事より、大体の情勢が掴めた。良く聞いてくれ。」 そんな事、と言われたのが気に食わなかったらしく眉を寄せたイザークの肩をディアッカが掴む。 すると少しばかり身体の強張りが緩んだ。やはり停戦後の情勢は知りたかったらしい。 それでも掴みかかりそうなイザークをよそに、アスランは一瞬間を置き淡々と話し始めた。 「カナーバ氏を中心に臨時評議会が設立されたそうだ。じきこちらにも連絡が入ってくる。」 「カナーバ・・・?何故彼女が・・・。」 アイリーン・カナーバといえはプラント最高評議会議員の一人だ。 しかし議員といっても所詮その他大勢の中の一人。何故彼女が中心になっているのか、とイザークは 疑問を浮かべた。 それにはディアッカも同意見だったらしく、ただ眉を寄せたままアスランの回答を待っていた。 「俺にもよく分からないんだが・・・ラクスの話によると、カナーバ氏はシーゲル氏とよく戦争について 話し合っていたそうだ。意志を同じくした同志だ、と・・・。」 「クライン派って事か?」 「ああ。停戦が決まったのも彼女が中心になって地球軍の司令室に突入したかららしい。」 「・・・今の議長はカナーバ氏という事か。」 「そういうことになる。臨時評議会と言っていたから、新政が成り立つまでなのかもしれないが・・・。」 アスランの言葉に二人は納得したような不満が残っているような表情を見せた。 ディアッカは今の政府がどうなっているのかようやく分かり、小さな溜息をゆっくりと吐いた。 イザークも自分を無理矢理納得させるが、表情を緩めることが出来ず無言のまま俯く。 「ラクスが話をつけると言っていたがまだどうなるか分からない。それまでここでじっとしていてくれ。」 「お前は自由に動き回れるのにどうして俺達はこんな所に閉じ込められるんだ!?」 「いや・・・それは」 「アスラン、わざわざ報告サンキューな。イザークは俺が何とかするから、お前はもう行けよ。」 「ディアッカ、何だそれは!!」 まだ何か言いたそうな両者だが、ディアッカは何とかその場を治めた。 アスランは事の事情を知っている為ディアッカに感謝しながら渋々部屋を後にする。 「っきゃ!」 「・・・!!」 後ろを気にしながらドアを出たアスランは、突然誰かにぶつかった。 声から女だという事はわかるその人物は軽く後ろに下がりながら当たった肩をおさえる。 アスランは咄嗟に謝ろうとするが、横に居たのが自分の知る人物だった事に驚いた。 「フレイ!大丈夫?」 「・・・キラ!?」 「え・・・・・・アスラン!」 「お前・・・どうしてアークエンジェルに?」 「あ、いや・・・その、彼女に会おうと思って。」 キラはそう言って横にいる彼女を気遣う仕草をする。 状況がまだよく分かっていないアスランは困惑の色を浮かべるが、キラは全く気付いていないようだ。 彼女、と言っていた人物―――赤毛の少女に視線を向けると、少女は怖がってキラの方を見つめた。 するとようやくキラもアスランの言わんとしている事に気付いたようだった。 「あぁ・・・ごめんごめん、紹介するね。彼女は僕らの仲間のフレイ・アルスター。アスラン達が来る前 までは彼女もアークエンジェルにいたんだよ。 フレイ、こっちの彼は僕の親友のアスラン・ザラ。・・・えっと・・・」 「アスラン・ザラだ。よろしく。」 「ぁ、ええ・・・フレイよ。よろしく・・・。」 アスランもキラの言いづらい自分の立場に気付き、先に言葉を発した。 フレイは違和感を感じたようだが軽く流すことにする。 すると、開いたままのドアから居心地の悪そうな声が届いた。 「おい・・・」 「?・・・君は・・・」 キラは部屋の中から見える銀髪の少年に見覚えが無く、アスランに誰かと尋ねる。 一方のディアッカは話そうとしていた事柄の当人であるキラがいた事に焦りを隠せず、 アスランにはぐらかせとでも言うような視線を向ける。 しかしイザークは、アスランがこちらを向いた拍子に見えた少女を驚愕の表情で見つめた。 「・・・!お前・・・!?」 「え・・・、・・・・・・!!」 フレイも向けた視線の先に見覚えのあり過ぎる顔を見つけた。 忘れるはずが無い。彼は自分がザフトにいた時に散々嫌な目を向けられた人物だ。 それが分かると、フレイは咄嗟にキラの背に隠れながら服を引っ張る。 「・・・キラ・・・っもう、行こう?」 「フレイ・・・?どうし」 「お願い!・・・行こう。」 キラはフレイの様子がおかしい事に気が付きどうしたのかと疑問に思った。 だが彼女の尋常ではない表情に、この場はひとまず立ち去った方がいいと判断する。 「・・・うん。じゃあアスラン、またね。」 「ああ・・・。」 そう言って二人は通路を足早に去っていった。 アスランはそこでふと気付いた。戦闘の時キラが必死に叫んでいた名前が「フレイ」だった事に。 あの時の様子から見て互いに大事な存在なのだろう、と思っていた。 道理でアークエンジェルに来ている訳だ。 アスランは久しぶりに見たキラの笑顔に安心し、自分も部屋を出ていった。 「フレイ・・・あの」 「キラ。」 「・・・・・・何?」 「あのアスランって人・・・なんでしょ?ザフトのパイロット。」 キラは、突然様子が変わったフレイに改めてどうしたのか訊ねようとするが フレイはその言葉を待っていたかのように違う話題へもっていき話をはぐらかした。 しかもアスランが自分と戦っていたガンダムのパイロットだという事に気付かれてしまう。 「・・・どうして?」 「だって、よく寝言で言ってた。アスランって。」 「あぁ・・・そう・・・。」 きっと戦闘の夢を見ていたのだろうが、寝言でアスランの名前を言っていた事に驚愕する。 フレイに聞かれていたという事もあり少々恥ずかしさを感じ、俯いた。 「・・・あの、部屋の人達も・・・パイロットなんでしょ?」 この発言にキラは、アスランが出てきた部屋の中にいた人物を思い出す。 しかしディアッカの隣にいた銀髪の少年に見覚えが無かった為、すぐに答える事が出来なかった。 「みんな強いんでしょ・・・?コーディネイターだし・・・。」 「フレイ、それは」 「別にコーディネイターが悪い奴だとは言ってないわ。でも・・・怖いもの。」 そう言うとフレイはキラの腕にしがみ付き顔を埋めた。 ふと彼女の左手に自分があげた小さな光を垣間見て、キラはゆっくりと彼女の赤い髪を撫でる。 「ここには悪い人なんていないよ。 ナチュラルもコーディネイターも関係なく皆一緒にいるんだ。」 「・・・でも・・・」 「怖くないよ。」 不安げに上げられた顔を、キラは優しく微笑んで見つめ宥める。 フレイは腕にしがみ付く力を強め、力無く頷いた。 |