そこに居るのは私の筈なのに。 そんな生ぬるい気持ちじゃ 言い表せなかった。 かつて自分の中で感じた事のある ・・・狂気。 -regret- まだ何も知らなかった頃キラを貶めた気持ちが、再び自分の中で暴れだそうとしている。 ・・・この二人の関係など何も聞いていないくせに、勝手に決め付けようとしている。 キラを自分だけのものにしたいという独占欲。 なんて醜いんだろう・・・。 苦笑がこみ上げてくる。 ラクス・クライン。シーゲル・クライン前議長の娘。 ・・・知っているのはこれ位だった。 分からないのなら、直接聞いてみるに越した事は無い。 そう思いフレイが口を開いた時には、既にラクスが喋り出していた。 「あの時以来ですわね。お元気そうで、本当に良かったですわ。」 「え・・・・・・?」 予想していなかった。彼女が自分の事を良かったと言ってくる事は。 フレイは自分が聞きたいことを忘れ、ただ唖然としていた。 父を守る為とはいえ、一時は殺そうとした彼女。良い印象はある筈が無いのに。 ラクスは、微笑んでフレイを見つめたまま。 フレイは何を言っていいのか分からなかった。 「あの時自己紹介をしそびれてしまったのを思い出して、キラとエターナルから移って来ましたの。」 「・・・自己紹介・・・?」 「はい! 改めまして、私はラクス・クラインです。よろしくお願いしますわね。」 そう言って手を差し伸べてきた。 いきなりの事の進め様に、フレイは訳が分からなくなっていた。 どうして殺そうとした相手に自己紹介と握手を求めるのか。何か目的があるのか。 聞きたい事は沢山あるが、フレイにはラクスに一番言いたい事があった。 いや、言わなければいけない事が。 「ごめんなさい・・・!」 精一杯の気持ちを込めて、頭を深く下げた。 ラクスはえ?と首を傾げた。 それもそのはずだ。いきなり頭を下げられて疑問に思わないはずが無い。 ・・・しかし、この時ラクスにはフレイの言おうとしている事が分かっていた。 分かっていての、演技。 「あの・・・戦闘の時・・・、私あなたを殺そうとした・・・。パパに生きていて欲しかったから。 言い訳かもしれないけど、あの時は私、周りが何も見えてなかった・・・。」 フレイは淡々と、戦場での事を振り返りながら話す。 ラクスはそんな彼女をただ黙って見つめていた。その表情からは何も感じ取れない。 「今は心から悪かったと思ってる。反省してるわ。本当に、ごめんなさい・・・。」 フレイは深く下げた頭をさらに深く下げ、謝った。 ラクスの目はフレイを捉えて離さない。瞬きもせず見つめていた。 その瞬間、フッと周りの空気が軽くなった。 それがフレイに分かる程、重かった空気が一瞬にして消えた。 「頭を上げてください。」 フレイはゆっくりと、顔を上げた。 そこには、変わらずの笑顔でいるラクスがいた。 「フレイさんのお父様がお亡くなりになったのは、戦争が起こした悲劇です。フレイさんの起こした事もそれと同様。 貴方は何も悪くありません。お父様を思いやったからこそ、あの行動を起こしたのでしょう?」 ラクスは淡々と、優しくフレイに語りかける。 フレイは信じられないという風に目を見開いている。 まさかこんな言葉を言われるとは思ってもいなかった。許してくれるはずが無いと。 「では自己紹介の話に戻りますわね。私はラクス・クラインです。貴方のお名前は?」 拍子抜けだった。彼女はこんなにも切り替えが早いのかと思う。 このままでは、自分も自己紹介するしかないではないか。 フレイは苦笑しながら、伸ばしているラクスの手を握った。 「フレイ・アルスターよ。よろしくね。」 結局感謝の気持ちも言いそびれ、何とも段取りの悪い会話だった。 しかしこの会話で、少しだけラクスの事が分かった気がする。 彼女は、人に対して丁寧で、優しく、まさに見た目通りの人物だ。少し天然だが。 「・・・では、これからはお二人の時間ですわね。」 「え・・・」 ラクスはそう言って後ろを見る。 彼女の視線の先は、キラ。 どこか不安そうな、心配している様な瞳。だがその視線は、まっすぐフレイを見つめている。 フレイはラクスと話しているうちに、キラの存在を忘れかけていた。 一気に押し寄せる、不安と緊張。 「お邪魔虫は退散しますわ。では、ごゆっくり。」 ラクスはそう言うと、ドアの向こうに移動する。 シュッと、聞き慣れた音が響いた瞬間、静まり返る部屋。 フレイは気まずい空気に耐え切れなくなり、キラから視線をそらした。 何から話していいのか分からず、ただ立ち尽くしていた。 「フレイ。・・・僕は」 「待って!私から話す。」 先に聞くと話したい事も話せなくなると思い、キラの言葉を遮った。 フレイは小さく深呼吸をすると、ゆっくり顔を上げた。 |