数日前の通信を思い出す。





最も嫌う私の親友からの、最も嫌な知らせ。









『今度の日曜に、私達の親交を兼ねた婚約披露パーティーがありますの。』



「・・・婚約披露・・・?」



『今回は親しい友人を中心に招待されるらしいので、とっても楽しみですわ!』



「・・・そうね。・・・私の出席は決まってるわよね?」



『当たり前じゃありませんか。を招かないなんて考えられませんわ。』



「ありがとう。・・・親友だもんね。」



『はい!では、楽しみにしてますわ。』



「私も。じゃあ、日曜にね。」









どこが楽しみなものか。







日曜は最悪な日になりそう。































pledge oneself to secrecy     PHASE-03





























「お待ちしておりました。様。」





ラクス邸の前に着くと、数人のメイド達に頭を下げられた。

は笑顔で交わし、幾度と無く通ってきた正面玄関に足を進める。



カツ、カツ、と良い音が響く長い廊下にさえもこの日の為に装飾が施されていた。

今はそんな事にも嫌な感情が渦巻く、気を抜いたらどうにかなってしまいそうな状態だった。







!」





突然自分の名を呼ばれビクッと肩が上がった。

このパーティーの主役、どちらでも心の準備が出来ていない今会うのはごめんだ。

恐る恐る振り向くと、この場には似合わない軽快な足取りで自分へと走ってくる

癖のある薄緑の髪を見て、ふっと安堵の息を吐いた。





「ニコル。」

「良かった会えて。絶対来てると思ったから、ずっと探してたんです。」

「そうなの?じゃあもっと早く来れば良かったわね。」





嬉しそうなニコルの顔を見て気持ちが安らぐ。

先程までのピリピリした自分が嘘の様に、穏やかになった。





「・・・やっぱり、ニコルは違うわね。」

「え?違う・・・?」

「ん〜ん、なんでもないわ。」





にこ、と微笑みニコルの反応を伺う。

彼は判ってくれた様で、一瞬苦い顔をするも同じように笑顔を向けた。



ああ、やっぱり、ニコルといる時が一番落ち着く。



アスランとは違う安らぎを与えてくれる。

ただ傍にいてくれるだけで癒してくれる、にとって唯一の・・・弟のような。

しかし二人は仲間意識が強い為対等に接する。弟というのも違和感が拭えない。

けれど、やはりよく考えるとその言葉が一番ぴったりとはまる気がする。







「じゃあ、私はラクスに挨拶に行ってくるわね。」

「わかりました。また後で。」









はニコルと別れると笑顔から、何も感じ取れない表情へと変わった。

ニコルのおかげで、ドロドロとした気持ち悪い感情が薄れた。

これなら今日も、嬉々とラクスに接する事が出来る。





「はぁ・・・感情のコントロール・・・一番の目標ね。」





自分に嫌気がさした。



























「ラクス。」

!」





声をかけるとラクスはに向かって一目散に走り出した。

そのままの勢いで抱きつかれ、足がふらつく。







「お久しぶりです。会えて嬉しいですわ!」

「私も。会えて嬉しいわ。」







は思いつく限りの言葉を使ってラクスと話す。

頭を使わないとラクスに使う優しい言葉が見つからないから。

そんな表だけの態度でもは様に見えるようで、違和感に感じられる事はないらしい。

一番傍にいる時間の長いアスランやディアッカが言っていたのだから間違いは無い。





ラクスの横にいたアスランに目を合わせる。

アスランはの視線に気付いたようで、何ともいえない表情をした。







「・・・アスランも、こんな所にいると貴族って感じするわね。」

・・・。」

「アスランはザフトに居る時、どんな感じなのですか?」

「ラクスっ・・・」

「う〜ん・・・そうね・・・。普通?」

「普通、ですか?」

「・・・実はあんまり判らないのよね。仕事の会話しかしないから。」







のその言葉を聞きほっと胸を撫で下ろす仕草をするアスラン。

もちろん嘘を並べたハッタリであるが、とアスランはそれで通していた。





「ラクス様。お時間です。」

「あ・・・わかりました。・・・、アスラン、私はこれからステージに参りますので、

終わるまでここでお待ち下さいね。すぐに戻ってきますから。」





ラクスはそう言うと、ステージの方へ向かっていってしまった。

突然の事で、何も問う暇が無かった。

しかしにとっては好都合だった為、アスランの顔を見るとふっと息を吐いた。







「・・・ラクスって、人の気持ちとか考えずにどんどん進めていっちゃうわよね。」

「まぁ、しょうがないよ。あれがラクスなんだから。」

「そんな事で納得するのは嫌よ。私がラクスと一緒にいる時どんな気持ちか、

アスランだってわかってるでしょ?」











その言葉にアスランは何も言う事が出来ず、ただ俯いたまま黙り込んでしまった。

すると、ステージから司会をするような言動が聞こえてきた。

会場内の全てがステージに集中される。







『皆さん、今日はお越し下さいまして有難う御座います。』







ラクスが自らマイクを持って話している。

は何が始まるのかと思いラクスを見つめるが、それ以外に目に留まるものがあった。

ラクスの後ろにはグランドピアノが置いてある。

そこにニコルが座っていたのだ。

はこれから起こることを察し、数ヶ月前にニコルに言われた事を思い出した。









(、僕この曲弾きたいです!)



(・・・ラクスの曲?ニコル、ラクスのファンだっけ。)



(あ・・・いいえ。違いますけど・・・その、と、とにかく弾きたいんです!いい曲じゃないですか!)



(・・・そんなに弾きたいなら・・・いいわ。教えてあげる。)



(やった!)









あの時はいきなり何を言うのかと思ったが、こういうことなら納得がいく。

ラクスにお願いされたのだろうが、何故ニコルなのかは分からない。

疑問が残ったまま、ステージ上では淡々と話が進んでいった。







『今回は私が、これからの未来が明るい事を、世界の平和を祈って、歌いたいと思います。

 皆さんに、どうか幸せな未来が訪れますように。』







ニコルの伴奏で始まった。

透き通ったラクスの歌声が会場中に響く。





はこの純粋な声が嫌いだった。何も知らない、本当の苦痛を味わった事のない声。

何も、知らないくせに。馴れ馴れしくしないで。あんたなんか大嫌い。

・・・そんな言葉が平気で口から飛び出しそうになるから。





ニコルのピアノだけが聞こえるように、集中する。

しばらくすると、ニコルの優しい音色が静かに入ってきた。









ふと視線を感じて顔を上げると、アスランがこちらの表情をを伺っていた。

は先程自分が言った事を思い出し瞳を揺らす。









「・・・さっきは、ごめん。軽率だった。」

「ううん。私が悪いの。婚約者を立てるのは普通の事よ。」

「俺は、だけだよ。ラクスとはいづれ別れる。その時までだ・・・。」











アスランの思ってもみない発言に、は目を見開く。

目尻から溢れそうになる涙を必死に止め、精一杯の微笑を返した。

















「・・・・・・私達、生き残れるかな。」



「・・・え?」



「もしアスランが死んだら、私も一緒にいくからね。」



・・・。」



「でもアスランは私が死んでも、死ねないでしょ?だから、私は絶対に生き残る。」





























不安から生まれ出た 新たな決意


































パーティー編です(笑)一応前編・・・というのかな?

ラクス&ニコル登場しましたね!しかしニコルの喋り方を忘れかけてたもんだから苦労しました;;

あの戦場に出ても尚持っている純粋さをどう出せばいいのでしょうかね。むつかしいです・・・。

ラクスについては、ヒロインが嫌ってる彼女を出せればいいかなと。

アスラン出番少なくてごめんなさいっ!次は出ずっぱりなので・・・お楽しみにっ!

06/10/4




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