pledge oneself to secrecy PHASE-02 「初任務はどうでした?先輩。」 「・・・その言い方やめてくれる?」 そう言ってゆっくり後ろに向く。 冷めた瞳でまっすぐ見つめる先には、と同じ赤服のエースパイロット、ディアッカ・エルスマン。 彼はいつから居たのか、先程が通った通路の壁に寄りかかり腕を組んでいる。 「その言い方って?」 「先輩。歳はディアッカの方が上でしょ?」 「ザフトにはのほうが先に入っただろ?」 「そうそう、「」ね。よろしい。」 質問を自分の発言ではぐらかされてしまい、押し黙ったところで沈黙が訪れる。 次に言うことを予測していたのか、の目が細められた。 ディアッカも彼女の変化に気付き組んでいた腕を解く。 二人ともこれからの会話が雰囲気を変えるものだと分かっていた。 ディアッカが言葉を発しかけた直後、カツン、と小さいが物音が聞き取れた。 精悍なその音は自分達と同じ靴音。 だんだんと近づいてくるそれに二人は顔を見合わせた。 見えたのが自分達の知る人物だと分かった時、お互い少し安堵しながら平静を保つ。 「お前ら・・・ここで何をしてる。」 イザーク・ジュール。 知っている事は愚かいつも共に行動している人物の登場に苦笑する。 いつもの見下したような口調に二人は答えた。 「別に?ちょっと雑談。」 「・・・俺はお邪魔みたいだから退散しま〜す。」 「え?・・・あ」 自分の言葉に乗ると思っていたは、ディアッカの意図を考え黙り込む。 走るでもなくひょうひょうと去っていく彼の背中を敵意の視線で見送った。 ディアッカは意図的に彼女と二人きりにした。 イザークの気持ちを知っているからだ。 の拒む気持ちも分かるが、ディアッカはこの二人が結ばれる事を望む。 彼女の気持ちが変わることを望む。 ・・・それが彼女にとって、一番の幸せになる道だと思うから。 「。」 しばらくイザークの射抜くような視線を受ける。 も彼の視線には些か怖気づく。 何もかも見透かされるような、しかし何処か美しくも感じる瞳。 見惚れそうな鋭く光るそれをもまた睨み返す。 「・・・何よ。何か用?」 「・・・・・・用は無い。」 「は?」 「・・・っこんな所でさぼっているなと言いたかっただけだ。」 動揺したイザークだったが、それは一瞬だけだった。 逸らした視線を再び元の瞳で彼女に向ける。 は彼の表情に一瞬驚いた顔をしたが、次の瞬間にはイザークをも凌ぐ冷酷な瞳に変わった。 お互い口を開かぬまま身を翻した。 は時々普段とは見間違えるほど冷たい瞳をすることがある。 それは何から来る感情なのか、根本の部分が誰にも分からなかった。 彼女は何者にも染まらない、自分だけの道を進む孤独な存在。 それでも彼女を理解し、ついて来てくれる仲間を彼女は信じる。 だが、イザークは彼女の事を何も知らない。知らないが故に理解も出来ない。 彼女が心から信じる存在にならない限り全てを教えられる事はない。 何者にも染まらない、もちろん流されることの無い彼女は要求されても、決して靡かない。 イザークはまずその事を理解しなくてはならなかった。 は何も言わず、その場を去っていった。 こんな時の彼女にどんな態度をとればいいのかイザークには全く分からない。 彼はその場に立ち尽くし、何かを考えるように俯いてしまった。 そこに、先程去った筈の人物が声を掛ける。 「もっと積極的に話せば?」 「・・・貴様・・・聞いてたのか」 ディアッカだった。 彼は先の通路の角から悪びれも無く出てきた。 ・・・のだが、イザークの殺意にも似た視線を受けとっさに両手を上げた。 「・・・あのさ、俺はお前の幸せを思ってだな・・・」 「煩い!何のつもりだ貴様!!」 「だから・・・単刀直入に言うとな?そんなんじゃお前の気持ちは伝わんないって。」 「・・・・・・っ分かってる!」 ディアッカの言葉が直球過ぎたのか、イザークの動きが一瞬止まる。 すぐに反論する辺りは何とも彼らしいがこれでは立場が無い。 だが先程の言葉が自分でも飽きれるほど酷いものだったという事は自覚している。 「だったら・・・どうすればいいんだ・・・。」 「・・・・・・。」 あのがどんな言葉を掛けられれば意識するようになるのか分からなかった。 そこが全く想像がつかない為、対処のしようが無かったのだ。 ディアッカもまた同じで、イザークに問われれば返す言葉が見つからない。 お互い下を向いたまま、暫くの時間が過ぎた。 やがてイザークは晴れない顔でその場を去り、ディアッカも仕事へと戻っていった。 イザークは、真っ直ぐ続く通路を振り返りディアッカの後姿を見る。 彼は何故自分にアドバイスのようなものをするのか分からないが、自分にとっては好都合。 だが、人の事に鋭い彼でものことは分からない様だ。 「やっかいな奴に惚れたもんだな・・・。」 自照の呟きとため息をこぼし、彼女の事を考える。 彼は一度だけ彼女の涙を見た事がある。それから今までは一度も、誰も見た事が無い。 時々見せる悲しそうな顔は彼女を放っておけない気持ちにさせる。 彼は彼女が何を思っているのか、何を背負っているのか、知りたかった。 知って、自分を頼って欲しかった。 二度と、あの苦しく歪む顔をさせたくなかった。 |