「雷切!!」
オレは右手に意識を集中させ、一気にチャクラを放出した。
バチバチと光る右手を見つめ、あの日を思い出す。
それは まだ穏やかな日常
-罪の痕-
其ノ四
「・・・くそっ・・・」
何度やってもチャクラを練りだす事が出来ない。
千鳥は一度に大量のチャクラを使う忍術。そう何度も練習できるものではなかった。
仕方なく、この日は修行をやめることにした。
額にべったりと付いている髪を掻き揚げ、鞄の中からタオルを取り出す。
真っ白な生地を顔全体に覆うと、今日の疲れを癒すように温もりに包まれる感覚がやってくる。
しばらくじっとしていると、視覚と嗅覚が遮られている為聴覚が鮮明になる。
小鳥の鳴く高く温かい音、軽やかな風の音・・・全てが木の葉の平穏を表していた。
オレはいつも修行が上手くいかない苛立ちをこうやって静めている。微かに聞こえる町の音に安堵しながら。
だが、同時に焦りの気持ちも募る。
未だに大戦が続くこの地で、いつ激しい戦いが襲ってくるかは誰にもわからない。今も刻々と近づいているかもしれない。
もし最悪の事態が訪れた時、この里を全力で守ると誓っている。その時の為に。
「この術だけは・・・完成させなきゃな・・・。」
疲れきった傷だらけの右手をグッと握り締める。
ゆっくりと開く。あちこちに切り傷や痣がある、少し茶色っぽくなった掌を見つめた。
「・・・カカシさん?」
「・・・・・・!!」
いきなり響いた声に驚いて顔を上げると、視界が変わった。
混乱する頭を整理する。目の前には、が右腕を左手で押さえている光景。
オレと同じ、「雷切」を発動する時の姿勢。
・・・そうか、こいつに「千鳥」を教えていたんだ。
の修行を見て幼かった頃の自分にトリップするとは・・・。
修行の時の事などそこまで思い入れが強いわけでは無い。どうして今頃思い出すのか。
このの必死な姿が、昔のオレと重なったのか・・・。
「そんなに無理してたのかねぇ・・・。」
「・・・・・・?」
はきょとん、とオレの顔を見つめている。
オレは完全に自分の世界に入っていたようで、の存在も忘れかけていた。
と、我慢の限界がきたのか、もう慣れているからなのか、が少し大きめの声で喋った。
「カカシさん、とにかく見て下さいよ!結構出来るようになったんですから。」
「・・・え!・・・あぁ、ハイ。」
はオレの返事を聞く前に術の体勢をとる。
一度深呼吸をし、カッと目を開き一気に印を結ぶ。手が風を切り、シュッシュッと鋭い音がする。
こいつの印をを結ぶ速さは、オレ以上のレベルまで来ている。あとはうまく発動できれば、完璧なんだが・・・。
「千鳥!!」
右手を下に下げ、腕をもう片方の手で押さえる千鳥の体勢。
青い光が掌から手首の上まで広がり、チチチ・・・と甲高い音が響く。
は額に汗を滲ませながら、必死で千鳥を維持している。
バシィ!!!
「きゃっ!!」
やはり加減が難しく、数秒で失敗してしまった。
しかし普通の失敗ではない。
千鳥の失敗はチャクラの量が足りない、又は練り上げる事が出来ない、この二つの理由からの場合。
だがはその正反対で、チャクラの量が多すぎて術のほうが耐えられなくなり、爆発してしまう。
それでも術として使用できなくも無いが、の手に負担が掛かり過ぎる。
「あ〜・・・まただ・・・。」
「発動は出来てるから・・・後は調節ができれば完成なんだけどね〜。」
「せめてコツとか教えてください。」
「さあ?オレはなんかやったら出来ちゃったし。コツなんてわかりませ〜ん。」
「・・・ずっとコレだし。」
オレだって考えてる。の膨大なチャクラをどうすれば千鳥に活かせるのか。
一番手っ取り早いのは、爆発した時にの手の負担を無くす方法。
「・・・頑丈な手袋でもはめれば、爆発しても術として使えるんじゃ・・・」
「それは嫌!中途半端なままの術なんて使いたくない。」
こいつはこいつで我侭だし。修行は一向に進まない。
しかし、突然が何かを閃いたように、再び千鳥の体勢になった。
いきなりどうしたのかと、オレが声を出す暇もなく印を結んでいく。良い案が浮かんだからなのか、いつにも増してスピードが速い。
あっという間に印は完成し、バッ!と手を下に向ける。チチ・・・と青い光が現れ始めた。
一定の大きさになるまで待つと、左足を少し前に出し、千鳥を発動している右腕を斜め後ろに回す。
「うまくいく・・・見ててください!」
「・・・何を」
次の瞬間、は右手を横にスライドさせるように、思い切り振った。
すると、千鳥が投げられたボールのように勢い良くの手から離れ、飛んでいく。
千鳥の音と風を切る音、二つの絶妙な音は飛ぶスピードを表し、掌で発動している千鳥とは迫力がまるで違った。
ドォォンッ!!
千鳥はが投げた先の木に当たり、激しい音が辺りに鳴り響いた。
その木は幅30センチ程ある大木だが三分の一は削れていて、横から見ると術の威力が垣間見れる。
オレは唖然とその光景を目にし、削れた木とを交互に見つめる。
は何度も練習した疲れが出てきたのか、息が荒く肩が大きく上下に動いている。
しばらくお互い動かなかったが、がふら・・・と後ろに倒れかけたのを見て、オレは一気に走り出しを受け止めた。
「!!」
「・・・できた・・・やっぱ天才?私・・・。」
「ったく・・・無理しちゃって・・・。」
オレは一瞬信じられなかった。千鳥を身体から放しても同じ状態で保っていられる筈が無い。
だが信じられなかったのは一瞬だけだった。
の能力を忘れていたからだ。
「千鳥を投げる事で手の負担を無くし、スピードを付けて威力をより強くした・・・か。」
「簡単な方法で成功させる事が出来たのは、私の力のおかげですかね。」
そう言っては自分の右手を見つめた。
千鳥を発動してから時間が経っているのに、チャクラが掌に少し残っていた。
普通ではこんな事はありえない。これはだけの能力。
「これで上忍試験は突破できそうです。」
「術が出来たって、もっと大事な事が分からないと上忍にはなれな〜いよ。」
「あはは。分かってますって!」
あれから一体、何年経ったか。もう遠い昔の事に感じてならない。
今ではあの日常すらも本当にあった事なのかと思えてくる。
だが、決して忘れてはならない事がある。
この平和な日常、そして最後に見たの顔。
あの顔を思い出す度、胸に秘めた思いがまた強くなる。
絶対にを見つけ出す。
もう一度心に強く刻み、オレはこの日常を生きる。
やっとヒロインとカカシの絡みを書けました。
もう四話なのに、今回初ですよ。カカシ夢だってのにねぇ・・・。
次回からまた絡み無しですスミマセ;;でも、離れても思いは繋がっているんだという・・・
あの・・・そういう感じで・・・。・・・・・・(汗
ムリですか?あ、ムリですか。
物語っていうのは設定など前もって完璧に準備しとけばいい話になるんですコレが。
あまり絡みが無いのはこの為だと思ってください(ぇ
06/4/10
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