これからどうするかという話になり、フレイは自分が使っていた部屋――キラの部屋に行きたいと言った。 何故、と聞くと、あの部屋が一番落ち着くから、何も無くてもあそこで休みたいという言葉が返ってきた。 確かに、アークエンジェルにいた頃はほとんどあの部屋に篭っていたと言っても過言ではない。 彼女にとって一番見慣れた、落ち着く場所なのだろう。 キラはフレイの言葉を聞き、部屋へと続く通路を歩き始めた。 本当はすぐにでもマリューの元に連れて行かなければならないのだろう。マリューもフレイの事を心配し、 きっと同時に自分と同じ疑問を聞きたがっているだろうから。 フレイは今までどうしていたのか。何故あの時、ポッドで現れたのか。 彼女の発言に重大な何かが隠されている、キラはそう思っていた。 何故かはわからないが、激闘を駆け抜けてきた自分の本能がそう知らせている気がするのだ。 マリューに言っては、地球軍に言ってはいけない事があるのではないか。 かく言う自分も地球軍なのだが、ここは彼女の身近な者として、先に聞いておきたい衝動に駆られていた。 そんな事を黙々と考えていた時、後ろから聞きなれた声が響いた。 フレイは、その声を聞くなりビクッと身体を震わせ、キラの服の裾をきつく握り締めた。 キラは彼女の気持ちを察し、自身も思わず唾を飲み込む。 そして、フレイ、と呼ばなかった彼に、ゆっくりと振り向いた。 「・・・サイ」 -regret- 「艦長が呼んでる。至急ブリッジに来いってさ。」 「・・・艦長が?」 「ああ。みんなも集まってる。話があるって言ってたぞ。」 キラはサイが、自分が思っていたのと別の言葉を発した事に拍子抜けした。 フレイの話題、もしくはフレイに話しかけると思っていた為、状況についていけず焦りが生まれる。 しかし、同時にふと生まれた疑問を漏らす。 「・・・フレイは?」 ”みんな”というのは、クルーみんな、という意味だろう。 ならばフレイを呼ばないのはおかしいのではないか。まるで、彼女だけを除外しているような。 サイは案の定ギクリとした表情を見せ、何かを考えるように言葉を発した。 「・・・フレイとは、艦長が2人だけで話したいそうだ。だから後で来るようにとも言ってたよ。」 「後で?今はいなくていいの?」 「ああ。・・・多分、彼女には分からない話だと思うから。」 そう言いながら、憂いを帯びた瞳を少し落とす。 フレイは、決して後ろを向かなかった。彼の姿を見るのが、怖かった。 あんな形で別れたのだ、どんな顔で彼を見たらいいのかわからない。 同時に、彼にどんな目で見られるのかも怖くてたまらなかった。 「・・・・・・」 「・・・・・・・・・」 「・・・わかった。」 数秒間の沈黙の後、キラは一言だけ発した。 その言葉を聞き、サイはほっとしたような表情を浮かべた。 キラは、自分の服の裾を話さずに後ろを向いているフレイに向き直り、顔を除く。 フレイの不安でいっぱいの顔を確認し、笑顔を作った。 「ごめん、フレイ。すぐ戻るから、先に行ってて。」 それにフレイはこくん、と小さな返事を返し、キラの服から手を放した。 キラはフレイの頭をかるく撫で、サイに向き直る。 「行こう、サイ。」 「ああ・・・、・・・・・・。」 会話が終わったにも関わらず、足音が聞こえない。 フレイは、一向に歩き出そうとしない2人に焦りばかりが募っていく。 心臓がドクドクと激しく鳴っている。次第に早くなる鼓動が更に焦りを生む。 思わずひくっと鳴ってしまいそうな喉を叱咤させる。 後ろを向けば、彼がいる。 どうすればいいのだろうか。ここで振り向けば、彼はどんな言葉を発するのだろう。 最悪の方向にしか考えが進まず、只ぎゅっと目を閉じた。 「・・・生きてて、よかったよ。」 そう一言だけ、耳にした。 2つの足音が遠ざかっていき、後ろを向くと、ただ静かな通路が続くだけだった。 |