Birthday 〜誓い〜 |
・・・と言っても、目覚めた時は時間の感覚が無かったんだけれど。 昨日の記憶を辿る。 戦闘があって、部屋に帰ってきて・・・それからの記憶が無い。 どうやら帰ってきてすぐに眠ってしまったようだ。 時計を見ると、午前8時を少し過ぎている。夕食を食べた記憶が無いので15時間以上寝てしまったらしい。 僕は重い体を無理矢理起き上がらせると、隣のベッドが少し盛り上がっているのが見えた。 誰・・・と考えなくともその人物は分かる。 隣のベッドに近づく。すると、フレイは何かを呟いた。 「―――・・・。」 寝言のようだ。でも僕にはフレイが何を言ったのか聞き取れなかった。 ベッドに近づき、フレイの顔を覗き込む。 僕はそこで息を呑んだ。 フレイの目に、うっすらと光るものが見えた。 それは頬を伝い、シーツまで濡らしている。 悲しい夢を見ているのか・・・。 「・・・い・・・や・・・・・・」 フレイは僕の服の裾を掴んだ。 僕は驚いてフレイを見る。だが、彼女はまだ寝ていた。無意識だったようだ。 フレイを起こした方がいいのか・・・? 僕は迷った。でも、そんな気持ちはは次の言葉によって全てかき消された。 「・・・・・・パパ・・・・・・。」 ズキ・・・と胸の内が痛む。 フレイは・・・お父さんの夢を見ていたんだ。 幸せだったに違いない。 ずっと続くと思っていたんだろう。フレイも、きっとお父さんも。 でも・・・その幸せを僕は奪ってしまった。 「あんた、自分もコーディネイターだからって、本気で戦ってないんでしょう!」 あの時のフレイの言葉が蘇る。 僕は・・・フレイのお父さんを守れなかった。 彼女はあの時どんな気持ちだったんだろう。お父さんが目の前で死んでしまって・・・。 「・・・ん・・・キラ・・・?」 そこで僕ははっと顔を上げた。見ると、フレイがこちらを見つめている。 「フレイ・・・。」 「・・・!」 僕が悲しげな顔をしているのか、フレイは自分が涙を流している事に気が付いた。 僕からは見えないように顔を隠しベッドを立つ。 そして蛇口を勢い良くひねりバシャバシャと顔を洗った。 「フレイ・・・大丈夫?」 「大丈夫よ・・・気にしないで。」 いつものフレイだった。でも僕は、自分がとても愚かだと思う。 その時フレイが一瞬こちらを見た気がした。でも、僕は顔を上げることが出来ない。 「・・・パパの夢を見たの。」 その言葉にさすがの僕も顔を上げた。 フレイからお父さんの話をするなんて思ってもみなかった。 フレイは続ける。 「毎年誕生日になるとね・・・パパ、どんなに忙しくても家に帰ってくるの。私はいいって言ってるのに・・・。 フレイの誕生日を仕事で過ごす訳にはいかないって・・・仕事なんか出来ないよって・・・。」 フレイは笑顔で話す。死んでしまったお父さんの事を・・・。 それを聞くだけで、胸が締め付けられる思いになる。 「僕は・・・フレイのお父さんを・・・」 「私、昨日誕生日だったの。」 「・・・え?」 「・・・だからこんな夢見たのかしら・・・。」 誕生日・・・? 咄嗟にカレンダーに顔を向け、今日の日付を見る。 「今日って・・・16日・・・?」 「そうよ。」 ・・・とんでもない事をしてしまった、と思う。 僕は昨日ずっとMSの中にいた。フレイと会ったのは、昼食の時だけだ。 その後すぐ戦闘があって・・・。 フレイは無表情だ。悲しんでいるのか怒っているのか全然わからない。 やるせない気持ちになり、僕はフレイの腕を引く。 そして思い切り抱きしめた。 「キャッ・・・ちょ、ちょっと・・・キラ?」 「・・・ごめん・・・。」 「え・・・?」 「・・・ごめん・・・。」 「どうしたの?キラ。」 僕は腕に力を込め、フレイに謝った。 誕生日の事にだけじゃない。お父さんの事や、今までにあったすべての事に対して。 それは僕の自己満足かもしれないけど・・・。 「誕生日の事なら気にしなくていいのよ。・・・アークエンジェルを守るために戦ったんだから。」 フレイは僕の背中に腕を回してそう言った。 ―――僕は誓ったんだ。 フレイを守り抜くんだ・・・って。 だから・・・何があっても・・・ 「守ってね・・・私を守って・・・。」 |