プレゼント ここはもうキラとフレイの部屋と化していた。 あちこちにフレイの化粧品や小物が置いてあり、生活できる最低限の物が二人分あるのだ。 いつからかはもう覚えていない。気が付いたときにはすでにここで生活していたといっても過言ではない。 周りの人々も、この二人については何も言わない。きっとただの恋人同士だ、と思っているのだろう。 同じ部屋で暮らしている事も、何も言わない。キラはアークエンジェルを守れる唯一の存在として 此処にいるわけなのだから、何も言えないのだろう。 キラの部屋、もといキラとフレイの部屋で一人、何もせずにベッドに座っている人物。 フレイ・アルスター。 彼女は、だたぼんやりと映るはずもないモニターを見つめていた。 ―――キラは今、あのカガリとかいう女と町に買出しに出かけている。 なんでも息抜きのためだとか艦長は言っていたけど、キラが町に出ても息抜きなんか出来る訳がない。 そんな事を考えていると、突然部屋のドアがプシューと開いた。 まずトリィが勢いよく入り部屋中を飛び回る。 その後ろから、当の人物が入ってきた。 「・・・おかえりなさい。キラ。」 「・・・ただいま。フレイ。」 まるで新婚夫婦のようなやり取りをする二人。 キラは疲れが溜まっているのか、手に持っている袋を置きぐったりと近くにあった椅子に座った。 フレイはやっぱり・・・とため息をついた。 艦長は良かれと思いとった行動なのだろうが、やはりキラは息抜きなど出来てはいない様だ。 「疲れてるでしょ。シャワー浴びてきたら?」 「・・・え?・・・う、うん。」 「?」 いつになくそわそわしているキラにフレイは疑問を持った。 ・・・何かあったのだろうか・・・? 「・・・あ!」 と、フレイは何かに気付いた様子でキラを見つめた。 シャワールームに向かう途中だったキラは、フレイの声を聞き振り返る。 その表情はとても可愛らしかった。キラは思わず頬を赤らめる。 「キラ!あれ買ってきてくれた?」 「あれ・・・?」 「あれよ!ア・レ。」 フレイはとても嬉しそうにキラを見つめている。 アレ・・・とは何だ? ・・・と言いたかったが、キラはもう気付いていた。 何しろ買いだし中に自分が最も気にしていた物だったのだから。 「えっと・・・エリザリオの・・・」 「そう、それ!買ってきてくれた?」 再びフレイはキラに問う。 ・・・「エリザリオ」とは、フレイが最も気に入っている化粧品のメーカーだ。 フレイの持っている物のほとんどがエリザリオなのだということは、この買出しに行く際 フレイに注文された時に初めて知った。 キラはフレイが「絶対忘れないでよ!」と少々苛立ち気味に言われた事を鮮明に覚えている。 しかし。 「・・・ごめん。」 「え?」 「・・・無かったんだ。エリザリオ。・・・だから変わりに・・・これ・・・」 そう、無かったのだ。 エリザリオは高級な化粧品だ。戦争で混乱している今、店の数さえ少ないのにエリザリオが売っている筈が無い。 だからキラは、種類の少ない中選びに選んで別の化粧品を買ってきた。 小さい袋の中からその化粧品を手に取り、フレイに見せる。 「そう・・・無かったの・・・。」 「ごめんね・・・。」 「キラが謝る必要なんて無いわ。代わりの物も買ってきてくれたし。・・・ありがとう。」 そう言ってフレイは代わりの品を受け取った。 それなりにちゃんとした物だし、これなら使えそうだ。 「あと・・・これも。」 と、キラはもう一つ何かをフレイに差し出した。小さな箱が紙に包まれていて、プレゼントの様になっている。 「・・・何・・・?」 「・・・開けてみて。」 フレイはキラが少し恥ずかしそうにしているのを見て、それを手に取り開け始めた。 そこには、指輪が入っていた。 「キラ・・・。これ・・・」 フレイは指輪から目を離し、再びキラの方に向いた。 「・・・その・・・深い意味はないんだけどさ・・・フレイに似合いそうだなと思って・・・。」 キラは恥ずかしそうに下を向いたまま話している。 指輪はシンプルなもので、小さな宝石のようなものがキラキラと光っていた。 フレイは、キラの様子がおかしかったのはこの為だったことに気が付いた。 それを知ったフレイは、キラの傍に近づき、その指輪を渡した。 「・・・はめて。」 「え・・・?」 「指輪。私の指にはめて。」 フレイはそう言って微笑んだ。 「ここよ。ここ。」 「う・・・うん。」 右手で左手の薬指を指すフレイに、キラは戸惑いながらも指輪をはめる。 自分の指にはめられた指輪を見て、フレイは嬉しそうに微笑んだ。 「綺麗ね・・・。」 「うん。」 と、フレイはキラに近づき、軽く口づけた。 「・・・ありがと。」 キラは少し驚いたが、再びお互い口づけを交わした。 人は、幸せが壊れてしまうのを何よりも恐れる。 いつ壊れてしまうかは、誰にも分からない。 明日か、もっと先か。 もしかしたら、幸せがずっと続くのかもしれない。 人生の歯車がどうやって廻るのかは、誰にも・・・自分にさえも分からない。 ・・・だから、人は願うのだろう。 ――――幸福な時が、いつまでも続いてほしいと・・・。 |